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田舎の時間

ハイ!フォークス!
連休。
いかがお過ごしでしたか。

僕は田舎へお墓参りに行ってきました。“田舎”と言っても母親の実家です。

茨城県下妻市は、関東平野のど真ん中にあって、東に遠く筑波山を望み、
西に鬼怒川が流れる人口約4万の本当に、本当ぉに!
何もないところです。

もう母も高齢のため、こちらの方へはそう簡単には来られません。
この機会とばかりに母の叔母の家へ寄ったり、母の叔父の墓参りを
したりと、慌ただしい一日となりました。

数十年ぶりに訪ねた母の叔母の家は(ややこしくてスミマセンねぇ‥でも、
母親にとってのオバさんって‥一体何て呼んだらいいんですかねぇ‥
僕にとってはお婆ちゃんの妹なんですがね‥)
なんだか神社みたいな家でした。
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この辺りの家の多くは、門扉のない門柱にカエルがのっかっています。
“家へ還る”という意味だそうで縁起が良いそうです。
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この呼び鈴、良い感じです。
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玄関を入ると、脇に三畳の茶の間があり、奥が客間で八畳間が二つ、
さらに台所の奥に四畳半が二間、この他に離れが二軒。
庭‥というか敷地に納屋のような小屋が三つ。

この辺りでは特に広いほうでもないこの家に老夫婦が2人っきりで
暮らしているわけですから、たまの訪問客が来れば
それは手厚いもてなしへと相成りました。

自家の畑で採れた野菜の天ぷら、煮込み、栗おこわ、煮豆、けんちん汁、
蒸し饅頭等を着いて早々にふるまわれ、季節を感じ、温もりを感じ、
お腹も心も満腹になりました。

家の中を見渡すと、漆喰の壁、曲線を描いた梁、加工されてい
ない“木”そのまんまといった柱やそこへ掛けられた古時計、剥製‥
時間はゆっくり流れるわけです。

片付けものを手伝って台所へ行ったおりに覗いたお勝手口の外に
無造作に置かれたまだ電化する前の‥おそらく昭和20年代の
大きな冷蔵庫がありました。
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その横には、今度は電化になった昭和30年代の冷蔵庫もありました。
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見つけた瞬間に、こういったものを所謂“お宝”的に捉えてしまう自分に
情けなさを感じ、慌てて打ち消したりしていました。
あぁ‥厭らしい哉吾が心!

間も持たず、しばらくしてから「ちょっと川見てくる」
と言い残し、ふらっと鬼怒川へ。

流れは後に利根川へと合流する一級河川の鬼怒川は、背の高い繁茂な
草に覆われていて、とてもその岸へとは下りられませんでした。
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それでも前回ここへ来た時には(36年前!)、今回訪ねた
叔父と一緒に、まだ夜も明けぬうちにこの草をかき分けていって、
100匹くらい鳴いてる「牛蛙を踏んづけたらどうしよう‥」
とか思いながら鯉を釣ったりしたものでした。

その日釣った鯉でお婆ちゃんが作ってくれた“鯉こく”の味は、
遠い記憶の中に今もしっかりと残っています。
“味”によって刻みつけられる記憶というものを、
人はなかなか忘れられるものじゃありませんね。
そんな事が頭によぎりながら、その叔父の家へと向かいました。

僕の従兄弟にあたるその家の子供たちは、皆結婚して家を出てしまった
ため、叔父はワンちゃん二匹とともに僕たちを迎えてくれました。
意外に元気そうな様子で肌つやもよく、一安心しました。


僕の父は足が悪かったため、父親と一緒に風呂に入った経験のない僕は、
小さい頃によく、この叔父と二人でお風呂に入りました。
時は“ピンカラ兄弟”の♪女のみちが大ヒットしていた頃、
まだ明るいうちの早風呂で、叔父はだみ声を模して
「♪わ~たし~がぁあぁ~捧ぁあぁげ~た~」と喉を鳴らしていました。
そう!
あれです。
ちびまる子ちゃんでたびたび出てくるあのシーンです。
あの頃は日本各地で繰り広げられたあのシーンを、僕も例に洩れず
何度となく体験させていただきました。
面白かったなぁ。

その叔父も今や好好爺になったかと思うと、今度は一転、
時の経つのは実に速いものです。

しみじみ、しみじみ‥ゴーン!(寺の鐘)

思えば昭和50年の暮れ。
我が家を突如襲った悲しいすったもんだの出来事。
その時、決して顔には出さなかった僕の深い悲しみに、この叔父はいち早く気づき、
さり気ない優しさでもって僕を救ってくれたことがありました。

多くの大人たちや親戚たちが“こんな時こそ厳しくしなければ”的な
態度でいるなか、日頃決して安易に物など買い与えない叔父が突然ボソッと
「ヤス(今も昔もこう呼ばれています)本屋行こう」
と呟きました。

冬休みだったので、親戚の子供たちも何人かいましたが(もちろん自分の子供も)、
皆にバレないように何気なく、そっと呟きました。
そして僕だけを連れ出し書店までぶらぶら歩いて行くと、
まるで自分が本を買う必要があったかのようなふりをして、目で本棚を追いながら、
またボソッと「何か‥好きな本一冊買っていいぞ‥」と言いました。
「どうして‥」と思いながらも、次の瞬間すべてを呑み込んだ僕は
なぜかだか少し焦って本を探しました。

子供にとっての“好きな本”なんてものは、それこそいくらでも
あるはずなのに、やはりそこは田舎の書店だったからなのか‥
それとも野球の本は持っているものばかりだったからか‥
いずれにせよ「どうしよう、どうしよう‥」と思いながら、なんとか導き出した
答えが、大して興味もなく、また背伸びして難しそうなものでもなく‥



小学館入門百科シリーズ32
『妖怪なんでも入門』
監修・水木しげる
定価450円


ゴーン!ォーン‥ォーン‥(寺の鐘と残響)
カァー、カァー!(カラス)

フッ‥
フフフッ‥
なんなんでしょうかねぇ‥このチョイス。

子供なりに考えたのでしょうか。
「オジちゃん、僕、大丈夫だよ!ちっとも悲しくなんかないんだよ!
だってほら、妖怪なんかに興味があって、現実なんて‥
まだ僕には全然わかんないんだから!」
という必死のメッセージなんでしょうか‥

それに大体‥
妖怪なのに“入門”って‥

“なんでも入門”って‥ねぇ。

なにかこう‥
アカデミックにしておけば親が買い与えるだろう的なことなのでしょうか。

ついでに言うと、この本の中に“全国各地の妖怪”みたいな章があって、
茨城県に出る妖怪には“日和坊”っていうなんとも地味な妖怪が
紹介されていました。
その説明によると、確か西の方角にむかって呪文を唱えると、
この日和坊が姿を現し、翌日の天気を晴れにしてくれる妖怪と書いて
ありました。



これって完全に“照る照る坊主”ですね!
茨城限定の、ちょっとおっかなくて面倒くさい照る照る坊主。

とはいえ、まだ地獄の存在を堅く信じていた頃の僕ですから、
早速これを実践してみたのは言うまでもありません。

「ヒヨリボウ、ヒヨリボウ出てきておくれ」
これを数回言いました。
(最後の“おくれ”はやっぱり照る照る坊主とかぶっていますね!)

えっ?
日和坊ですか?
そんなもの出てくるわけないじゃないですか。
妖怪なんてこの世にいないんだから。

ただ
当然の結果として、空しさと恥ずかしさだけがあとに残されただけです。

なんとなく、もう一度あの本を見てみたいような気がします。
今でも神保町の古本屋へ行けば、割と簡単に手に入れる事が
出来ると思います。
でも、おそらくそんな事はしません。
叔父の思い出と共に、心の中にひっそりとあるから良いのです。

数年ぶりに訪れた“田舎”
なぁーんにもないなんて言いましたが、
僕にとっては本当に沢山の思い出がありました。
良い日でした。

ではまた!

“先日、昭和44年の‘輝く日本レコード大賞’の映像を観ていたら、
番組の最後で大賞を受賞した佐良直美と、最優秀歌唱賞を受賞した森進一と、
最優秀新人賞を受賞したピーターの三人が、
ステージに並ばされてつっ立ってんの見て
「なんだよ‥これ、なんのことはないレズとオカマと恩知らずじゃねぇか‥」
なぁーんてひとりごちてたでやんの!”
でお馴染みのヨシオでした!
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2009-09-23 : 小林ヨシオblog : コメント : 0 : トラックバック : 0
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Author:The Young Folks
FOLK ROCK.COUNTRY BAND。Bob Dylan、The Byrds、The Lovin' Spoonful、PP&M、Eagles、The Band etc.カバーセッションを経て現在はオリジナル曲中心にステージ構成。時にエレクトリック、時にアコースティックとフレキシブルに活動中!

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